2023年3月10日、こちらのオフィシャルショップで発売を迎えるワイドマグですが、ここまでの道のりは前途多難。
こちらの記事では可愛いマグの裏に隠された、開発のきっかけから苦労まで書かせていただきます。
前例のない陶磁器マグ、挑戦のきっかけ
まず、アデリアレトロを作っている私たち石塚硝子株式会社は社名にもある通り「ガラス食器メーカー」です。
ガラスのことなら200年を超える長い歴史の中で培った技術があるのですが、今回発売するのは専門外の「陶器」。
なぜこんな専門外のことをすることになったかというと…
「アデリアレトロの耐熱マグで温かい飲み物を飲みたい」というお声をSNSのコメントやDMでいただいたからです。
しかも、お一人の声ではなく数名の方から長い間いただき続けました。
耐熱ガラスアイテムは、アデリアレトロのスタート時から開発メンバー内で何度も議題に上がっていたのですが、実は私たちの工場設備では耐熱ガラスの生産はできないのです…。
アデリアの耐熱ガラス製品は全て国外の協力工場で生産しています。
しかし今回国外で生産したものを使ってしまうとアデリアレトロのコンセプトの一つ、「安心安全の日本製」という部分が揺らいでしまいます。
私たちは耐熱マグを作りたい気持ちと、コンセプトの間で長く葛藤していました。
そして新たな考えに辿り着きます。
「温かい飲み物を楽しんでもらえるのであればガラスから離れ、陶磁器でマグを作ってはどうか。」
冒頭でもお伝えした通りガラス製品なら自信のある私たちですが陶磁器開発の知識や経験はほとんどなく、簡単な道の選択ではありませんでした。
モデルになったヴィンテージ品とデザイナーのこだわり
メンバーで話し合い、形状は昭和当時のものから引用するのが良いというアイデアにいたり、2022年2月にフォロワーの方からおかりした70年代頃の花ざかりのデカマグ(通称)の形状を採用しました。
いつものことながら当時の図面や資料が一切残っておらず、 一から図面を作らなければならない状況でした。
ヴィンテージ品のマグを手元に置いて採寸し、形状をよく観察しながら図面を書く細かい作業の連続・・・。
さらにデザイナーを悩ませたのは元の形状を再現する上での様々な制約で、 何度も試作品を作り一つ一つクリアしながら納得のいくデザインを追求していきました。
ワイドマグをデザインしてみて
デザインを手掛けるのは、 アデリアレトロの商品全般に携わるデザイナーの杉本です。
アデリアレトロ デザイナー 杉本
「こだわった点はレトロっぽさを感じるぽってりとした形状とおしゃれな台座の彫刻部分の再現で、 何度も形状を確認しながらデザインを進めました。
また、 ハンドルは使い心地と雰囲気を出すために原型から幅や形を少し変更したり、口部は厚すぎず薄すぎずちょうどいい厚みを意識したりと、 ヴィンテージの雰囲気に近い仕上がりで、 使い心地も意識したデザインに仕上げています。
今回は陶磁器にした事で熱湯はもちろん、 電子レンジでの加熱にも耐えられるようになり、 普段使いにぴったりな仕様にリメイクできたと思います。」
陶磁器工場探し
デザインが決まり、 次は成形工場の選定です。
手探りで成形工場を探していましたが、 なかなか見つからず・・・。 そこで陶磁器業界でトップクラスの鳴海製陶 (石塚硝子のグループ会社)に相談して高い品質と安全性を達成できる工場を紹介してもらいました。
食器に柄を付ける転写加工に関しても国内の有名なブランドやメーカーの加工を手掛ける経験豊富な工場に決まり、 本格的な製造に向けて準備が進んでいきました。
こちらは転写工場の現場で活躍する超ベテランの職人さんです。
転写紙という柄を付ける専用のシートを食器に貼る作業はなんと手作業!
正確かつ素早く一つ一つ丁寧に転写紙を貼り付ける動作は、何百回も同じ作業を繰り返した人にしかできない洗練された動きでした。
なんとも言えない温かみがあるのも手作業ならでは。 (作業着も可愛い)
マグをお手に取っていただいた際は、職人の方々の手で柄がつけられていることを思い浮かべてみてください。
妥協のない日本製の品質
ここまで決まればもう発売まで秒読み…
マグの発売発表をした2022年11月当時、誰もがそう思っていました。
しかしこの時の私たちプロジェクトメンバーは、自社の品質基準の厳しさをまだ知らなかったのです…。
ガラス製品では難なくクリアしていた品質の基準ですが、今回は陶器。念には念を押し社内の品質保証部門が丁寧に試験を重ねていった結果、ガラスでは経験のない細かい問題が発覚し、それを修正し、という作業を幾度となく繰り返しました。
これが日本製のクオリティを保つ老舗企業の品質基準か、と自社のことながら感心するほどの慎重っぷりでした。
結果、安全性を証明する第三機関チェック検査も見事通過。
おかげで私たちメーカーとしては納得のいく安心安全なマグを作ることができたのですが、発売を楽しみにしてくださる皆様を長らくお待たせしてしまうこととなってしまいました。(本当にごめんなさい)
レトロファンの声をチカラに、諦めたくない想いがカタチに
構想3年。 異素材でのアデリアレトロ開発というハードルの高さにプロジェクトが頓挫する場面が多々ありましたが、 それでも諦めなかったのはファンの皆様から届く要望をなんとか叶えたい、 諦めたくない、 という強い気持ちでした。
新しい事に挑戦するという事は本当に難しく、 様々な壁が立ちはだかりました。
その度にレトロメンバーみんなで考え、話し合い、 一歩ずつ進んできました。
最初は女性三人だけでスタートしたアデリアレトロですが、 今では同じ気持ちをもったメンバーも増え、 新しい陶器というジャンルにチャレンジできる土台もできました。
まさしく継続は力なりです。
そしてこの陶器マグカップを進める上で何よりも大きなチカラになったのは私たち以上にアデリアレトロを愛してくれるファンの方たちの存在です。
SNSでの反応やコメントの数々、 実際に励ましのお手紙をいただくことも多く、いつも私たちの原動力になっていて、 感謝の気持ちでいっぱいです。
これからもファンの皆様の声に耳を傾け、 ファンの皆様と一緒にアデリアレトロを育てていきたいと考えています。
これからも応援よろしくお願いします!
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